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== 派遣事業の種別 ==
 
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; 特定労働者派遣事業
 
; 特定労働者派遣事業
: 派遣元に常時雇用される労働者(自社の社員)を他社に派遣する形態。届出制。
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: 派遣元に常時雇用される労働者(自社の正規社員)を他社に派遣する形態。届出制。
 
: 一般労働者派遣の業者に比べると、派遣先として対応する企業・職種の幅は狭いが、特定の事業所に対し技術者(主にコンピュータ・IT・[[エレクトロニクス]]・[[機械]]設計関連)などを派遣するような業者が多い。
 
: 一般労働者派遣の業者に比べると、派遣先として対応する企業・職種の幅は狭いが、特定の事業所に対し技術者(主にコンピュータ・IT・[[エレクトロニクス]]・[[機械]]設計関連)などを派遣するような業者が多い。
 
: スキルアップのための講習会が充実しているところが多い。
 
: スキルアップのための講習会が充実しているところが多い。
  
 
; 一般労働者派遣事業
 
; 一般労働者派遣事業
: 派遣元に常時雇用されない労働者を他社に派遣する形態。許可制。
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: 派遣元に常時雇用されない労働者(自社の非正規社員)を他社に派遣する形態。許可制。
 
: 臨時・[[日雇い]]派遣もこれに該当する。
 
: 臨時・[[日雇い]]派遣もこれに該当する。
 
: 一般的に「派遣会社」といえば、この形態の事業者が広く知られている。
 
: 一般的に「派遣会社」といえば、この形態の事業者が広く知られている。
 
: スキルアップのための講習会を用意していないところもある。
 
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: 現在、一般労働者派遣事業の許可を得れば特定労働者派遣事業も可能である。
  
 
== 法的制限 ==
 
== 法的制限 ==

2014年8月15日 (金) 20:25時点における版

労働者派遣(ろうどうしゃはけん)とは、雇用形態のひとつ。事業主(派遣元という)が、自分が雇用する労働者を自分のために労働させるのではなく、他の事業主(派遣先という)に派遣して、派遣先の指揮命令を受けて派遣先のために労働させる事をいう。

この雇用形態の労働者のことを一般に派遣社員(はけんしゃいん)といい、雇用関係は派遣元と派遣社員の間に存在するが、指揮命令関係は派遣先と派遣社員の間に存在するのが特徴である。労働者保護の観点から、派遣できる業種、派遣期間の上限、派遣を業として行うための許認可制度など様々な規定が労働者派遣法により定められている。俗に人材派遣、もしくは単に派遣と呼ばれる事が多い。

派遣会社搾取

概要

雇用形態について、通常は雇用するために契約を結ぶ場合、雇用者と労働者二面的契約関係となるが、労働者派遣法によって認められた形態では「派遣元(派遣会社=実際の雇用者)と労働者(派遣労働者)」、「派遣先と労働者」、「派遣元と派遣先」という三面的契約関係となる。

また、賃金の流れは、派遣元は労働者を雇用し賃金を支払い、労働者は派遣先の指揮監督を受け労務を提供し、派遣先は派遣元に派遣費用を支払う仕組みとなっている。

※労働者派遣法が出来る以前は、このような雇用形態を「間接雇用」として職業安定法により禁止していた。(労働者の労働契約に関して業として仲介をして利益を得る事の禁止。)

派遣可能な業種や職種は、拡大している。当初はコンピュータ(IT=情報技術)関係職種(システムエンジニアプログラマーオペレータ等)のように、専門性が強く、かつ一時的に人材が必要となる13の業種に限られていたが、次第に対象範囲が拡大し、1999年の改正により禁止業種以外は派遣が可能になる。

業界ごとの動向を見ると、販売関係や一般業務の分野では、大手銀行製造業電気通信事業者などの主要企業が人材派遣会社を設立し、親会社へ人材派遣を行い業務をこなすケースがみられるようになった。製造業などでは業務請負として、一定の業務ごと派遣会社から人材を派遣してもらう場合も多い。コンピューター関連職種では、最新技術への適応が求められることや長時間労働(いわゆるデスマーチ)に耐えられかつ派遣単価が安い若年者を求める顧客(派遣先)が多い。反面、年長者になるにつれて最新技術に追いつけなくなったり、年長者であるが故に派遣単価が高くなるなど顧客から敬遠される傾向にあり、他業種への転向を余儀なくされるケースが少なくない。

社会構造としての問題、格差の元凶としての問題

派遣社員の状況については、退職した後の就業機会など希望して派遣社員としての働き方を選択する人間が多いとの調査結果もありはするが他に選択肢がないためやむにやまれず派遣社員となったケースも存在する。正社員の雇用が少ない中で、派遣社員の雇用が増えていることなどから、格差社会の元凶との指摘もさかんにされるようになっている。

だが、派遣業界側は「派遣社員が非正規雇用の8%しか占めていないことや、派遣と請負の混同などで現状を誤解した誤った認識である」などと主張した。

2008年2月8日の衆議院予算委員会で日本共産党の志位和夫が行った質問で、労働者派遣事業の現状の問題を取り上げた。質疑の詳細は志位和夫#日雇い労働と派遣に関する質問を参照。

なお、日雇い派遣については、派遣元企業あるいは派遣先企業での違法行為が相次いで発覚したため、2009年を目途に日雇い派遣事業を原則禁止する方向で厚生労働省が検討している。詳細は、日雇い#日雇い雇用の問題点を参照。

なお、秋葉原通り魔事件江東マンション神隠し殺人事件の加害者はそれぞれ派遣社員であった。このため、派遣社員が置かれている経済的基盤が貧弱なことによる犯罪発生が懸念視されている。

また「日本の財界の者やそれと関係のある政治家たちが、企業経営者側の都合ばかりを優先し、経営者にとって都合のよい派遣労働者の割合が非常に増えてしまうように法律を変えてしまった。日本の雇用のしくみ、つまり日本人の社会の構造をこのようにしてしまったことに根本的な問題がある」「もはや"個々人の選択の問題"などといったことにとどまるものではなく、未来の展望を持つことを望んでいるのにどうにも持てない人々を大量に作りだしてしまう、社会構造としての問題だ」「こういう社会構造を放置しておくこと、苦しむ人々を放置しておくことは、社会や政府として問題がある」といった主旨のことは(特に2008年ごろ以降は)マスコミ(TV、新聞など)などでも時々言及されるようになっている。だが、問題は根深く、日本政府の対応(改善策)は遅々としてあまり進んでいない(2010年現在)。そうこうしているうちに、2010年6月には、やはり派遣労働者の立場から抜け出せなくなり苦境に陥った男性がマツダで無差別殺人を起こすという事件が起きてしまった(マツダ本社工場での連続殺傷事件)。

派遣社員問題

派遣事業の種別

特定労働者派遣事業
派遣元に常時雇用される労働者(自社の正規社員)を他社に派遣する形態。届出制。
一般労働者派遣の業者に比べると、派遣先として対応する企業・職種の幅は狭いが、特定の事業所に対し技術者(主にコンピュータ・IT・エレクトロニクス機械設計関連)などを派遣するような業者が多い。
スキルアップのための講習会が充実しているところが多い。
一般労働者派遣事業
派遣元に常時雇用されない労働者(自社の非正規社員)を他社に派遣する形態。許可制。
臨時・日雇い派遣もこれに該当する。
一般的に「派遣会社」といえば、この形態の事業者が広く知られている。
スキルアップのための講習会を用意していないところもある。
現在、一般労働者派遣事業の許可を得れば特定労働者派遣事業も可能である。

法的制限

期間は原則1年。延長は最長3年まで可能だが、労働者の代表(過半数により組織される労働組合、または過半数により選任された代表者)の意見を聴取する義務がある。 なお、派遣労働者・派遣事業者の交代の有無にかかわらず、期間は同一業務について通算される。 期間を越えて同一の業務を継続する場合、派遣労働者を直接雇用しなければならない。

但し、情報処理システムの開発や保守(IT関連)など政令で定める26の業務については専門的な業務であるか、特別の雇用形態が必要とされることにより、期間の制限は設けられていない。

紹介予定派遣
労働者派遣の内、派遣先企業での直接雇用を前提とする形態。
一定期間派遣社員として勤務し、期間内に派遣先企業と派遣社員が合意すれば、派遣先企業で直接雇用される。ただし必ずしも正社員になれるとは限らない。前提になっているのはあくまで「直接雇用」なので、契約社員アルバイトも含まれる。派遣事業者は労働者派遣事業と職業紹介事業の双方の許可(届出)が必要。派遣期間は6ヶ月以内。
業種の制限
建設業務警備業務港湾業務医療業務に人材を派遣することはできない(ただし医療業務のみは、2006年3月1日より、紹介予定派遣出産育児介護休業の代替要員、僻地および社会福祉施設への派遣のみ可能になる)。
再派遣の禁止
派遣社員を派遣先からさらに派遣させることはできない。(二重派遣)
特定派遣先のみの派遣も禁止されている。(専ら派遣)
事前面接の禁止
派遣を受けようとする事業主は事前面接や履歴書の提出など派遣社員を「特定することを目的とする行為」をしてはならない。ただし、前述の紹介予定派遣を除く。

賃金について

派遣社員の賃金(交通費、福利厚生費等を含む)は、派遣先が支払う費用の約6 - 7割となる。中にはグッドウィル2008年7月末に廃業)のデータ装備費のように、派遣企業が様々な名目で派遣社員から賃金を徴収しているケースがあり、問題視された。グッドウィルのデータ装備費については、日雇い派遣労働者であった福岡の30歳代の男性がたった一人で、弁護士も立てずに返還を求めて提訴し、福岡地裁は2008年12月4日、グッドウィル側に全額返還を命ずる判決を下している。

労働者派遣法制定に至るまで

労働者派遣法施行以前は、上記のように、江戸時代以降に行われていた労働者派遣の劣悪な労働環境が深刻な問題となっていたため、職業安定法により間接雇用が禁止されていた。それにも関わらず「業務処理請負業」として、人材派遣会社が違法と知りながら労働者の派遣を行っていた。

労働者派遣法の制定にあたっては、施行前年の1985年女性差別撤廃条約を批准し雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律を改正したことにより、秘書受付嬢などのいわゆるピンクカラーを募集できなくなったため、派遣という形で引き続き対応させるために労働者派遣法を制定した、と言う説がある。

企業側のメリット・デメリット

メリット
  • 人件費の変動費化
    派遣社員への給与を、固定費としてではなく変動費として計上することが可能。また、企業が派遣元へ支払う金銭は消費税法上「課税仕入れ」となる。その結果国などに納める消費税等を安く済ませることができる。ただし後述のデメリットのように、トータルで人件費が抑制できるとは限らない。
  • 労働力を必要な時(業務繁忙期、年末調整など)にのみ、必要な分だけ、確保する事が容易。(労働力のジャスト・イン・タイム)
  • 自社の正社員採用にともない発生するリスク(不適切な人材の採用等)が減らせる。
  • デメリット
    • 派遣元企業のマージンが大きい場合には、派遣労働契約が長期化すると長い目で見て高コストになる。
    • 派遣社員は短期で入れ替わっていくため、特に製造業において技術の継承を阻む要因となる。

    派遣社員側のメリット・デメリット

    メリット
    • 個人で仕事を見つけにくい秘書などの業務では、就職口を探す有効な手段となる。
      • 大手企業の場合、秘書などの業務で派遣社員を活用していることが多い。
      • 派遣会社に登録することで、自分で探すのに比べ広範囲から仕事を探してもらうことができる。
      • 派遣会社の登録の際にスキルチェック等が行われ、自分にマッチした職に就くことができる
    • 就業条件を設定して働けるため、家事などと両立がしやすい。
    • 派遣先企業の雇用リスクを抑えられるため、企業の雇用需要を喚起し労働者に多くの雇用機会を与える。
    • 派遣先企業とのトラブルにおいても派遣会社の仲介や援助が得られる。
    • 自己のスキルアップに応じて単価が上がるため、年功序列の労働形態に比べ自己啓発のモチベーションにつながる
    • 派遣先企業で長期にわたって働くわけではないため、人間関係等の問題に煩わされることが少ない。
    • 派遣先の労働時間に応じて賃金をもらうため、サービス残業の強制がされにくい
    • 多くの派遣先にかかわることで、一社のみで働くのにくらべ多様な知識や経験が得られる
    • 引っ越し等のライフイベントに応じて柔軟に派遣先を変更することができる
    デメリット
    • 将来への見通しが不安定
      • 若いうちは良いが、年を取る(目安は35歳という指摘がある)と仕事が無くなっていく。
      • 有期契約および時給契約であるため、企業の暇忙により随時雇用と契約終了が実施される。
      • 派遣契約が最長3年という期間制限があるため、期間満了後に直接雇用されない場合は職場を変えざるを得ないことが多い。
      • 不況になると、派遣切りに遭うリスクがある。派遣先による契約の中途解除といった人件費カットの対象にされ、派遣先の正社員より仕事を失いやすい。
    • 労働内容が正社員と差がない場合がある。
    • 派遣先企業の都合で配属先や勤務時間等が頻繁に変えられる例や、急に解雇される例などのトラブルが多発している(派遣労働力の担当は人事・労務ではなく資材調達)。
    • 派遣先企業が支払う派遣費用に対して、派遣労働者に直接渡る賃金は少ないため、派遣先企業と派遣労働者との間で、提供する労働とその対価について、両者で認識のギャップが生じる。特に特定労働者派遣事業においては派遣会社での年功序列による単価で給与が支払われることが多く、派遣先企業での派遣単価や作業の難易度が上がれば上がるほど、派遣社員に対する賃金が割に合わなくなる。また日当や宿泊費などの手当については派遣先企業からは派遣先のルールに従って派遣会社に手当が支払われるが、派遣社員本人には派遣会社のルールに基づいて手当が支払われるため、日当や宿泊費が減額されたり、丸ごと中抜きされるケースも少なくない。
    • 就職活動の際に、派遣労働の経験がキャリアと認められないことが多い。
    • 派遣会社によっては、派遣社員のスキルアップを目的とした講習会が設定されているところだけではなく、派遣社員のスキルを十分把握できていないことがあり、スキルのミスマッチが潜在している状態で最初から現場に投入されるケースがある。
    • 住宅ローンを借り入れる際など、金融機関による信用を受けにくい。ただし、定期で安定的な収入がある場合はこの限りではない。
    • 正社員と同等の能力があったとしても、社会的信用は劣る場合が多い。(派遣元の規模や本人の年収、勤続年数によって決まるため)
    • 労働組合は正社員の待遇改善だけで精一杯の状況なので、連合によれば、「『派遣切り』を打開する有効な策はない。まずは、正社員を守る闘いをしていく」という方針で、労組によってさえも派遣社員の権利が守られる状況にない。

    問題例

    問題例は数多く発生しているが、有名なものだけを紹介する。

    • フルキャスト」は法律で禁止されている警備業務の派遣を行っていたとして2007年1月~3月にかけて家宅捜索と行政処分を受けている。また、禁止されている港湾業務における荷役の労働者派遣を行ったことにより、事業停止命令を受けた。
    • ヨドバシカメラ上野店」での派遣社員に対する暴行事件で、ヨドバシと派遣会社が提訴された事から発覚したケースがある。
    • パソコンメーカーの「デル」が、法律で禁止されている事前面接を行い、罰金刑を受けたケースがある。これは氷山の一角に過ぎず実際には広く行われている。
    • グッドウィル」は「データ装備費」と称して1回の労働につき200円を給料から天引きする形で派遣者から徴収していた。グッドウィルは「データ装備費」は派遣先での破損や事故の際の保険料や、備品調達のために使う金としていたが、実際にはこれら徴収された金を利益の一部として計上していた。(フルキャストなど他の派遣会社も「業務管理費」として同様の行為をおこなっていたが、現在では批判のため廃止しているところが多い。)また禁止されている二重派遣により、これもまた禁止されている港湾業務における荷役の労働者派遣が行われていた。
    • アイライン」はキヤノン宇都宮工場で偽装請負を行なっており、偽装請負に対し労働局が指導を行なった。また本件は衆議院予算委員会公聴会で取り上げられている。
    • 名古屋市の人材派遣会社『マルゼンロジスティックス』は、長浜キヤノン(キヤノンの子会社。滋賀県長浜市)へ労働者を派遣してきているが、同社との請負契約終了に当たり、実際には解雇しているのに、『自己都合退職』のように装うため、退職届を提出させていたことが発覚。『自己都合退職』扱いにされると、失業給付金をすぐには受け取れないなど問題が多く、労働者を支援する労働組合から、非難の声が上がっている。

    関連作品

    脚注

    関連項目

    雇用
    関連する業務形態
    社会問題